PS4&PS5の超大作『ゴーストオブツシマ』を遅れながらクリアしました。プレイ時間は100時間超え。クリアするのが勿体なく感じ、半年くらいかけて地道に進めていました。
このゲームの世界観やグラフィックは申し分ないのですが、それ以上に刺さったのが物語シナリオの部分。
私はゲームにおいてとくにストーリー面を重視するゲーマーでもあるので、この記事ではストーリーに比重をあてクリア後のレビューを書いてきます。
作品紹介
タイトル:ゴーストオブツシマ(Ghost of Tsushima)
発売:2020年7月
発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発元:Sucker Punch Productions
対応:PS5、PS4、Steam
ディレクター:ネイト・フォックス 、ジェイソン・コーネル
ジャンル:アクションアドベンチャー
1274年、鎌倉時代を舞台にした時代劇アクションアドベンチャー。史実の「蒙古襲来」を題材にしており、日本の対馬列島に元朝の将軍「コトゥン・ハーン」率いる蒙古軍が襲来。プレイヤーは対馬列島を収める武家の一つである境井家の当主「境井 仁」となり、生き残った数少ない仲間たちと共に対馬奪還を目指す。
※ストーリーの大枠については触れますが、重要な部分のネタバレは含みません。
ストーリー・シナリオ・世界観の評価レビュー
このゲームを購入した理由は、もともと対馬の美麗なオープンワールドで侍ごっこをしたかったからです。なのでストーリーはさほど期待していなかったのですが、意外や意外、まるで映画のような重厚なシナリオで驚かされました。
ストーリーの根底には、ゲーム内でも繰り返し語られる「誉れ(ほまれ)」があります。誉れというのは、「誇り」や「名誉」を指す言葉であり、侍(武士)としてどうあるべきか、なにを名誉とするかが大きなテーマとなっています。
侍は、主君に「さぶらう」ものであり、主君に仕え、主君のために尽くすことが名誉とされていたようです。このあたりの話はボーナスコンテンツのディレクターズコメンタリーでも語られており、当時の侍は「主君のために死ぬ」ことが最大の名誉であり、相手に勝つ負けるは関係なく、とにかく主君のために戦場に戦い死ぬことが美しいことであると考えられていたようです。
もともと私はあまり侍というのは詳しくなかったのですが、このゲームがきっかけで興味が深まり、侍関係の映画や解説動画などもたくさんみました。たとば幕末の侍を描いた映画『燃えよ剣』『ラスト・サムライ』なども観ましたが、鎌倉時代以降、幕末から明治になり侍が消えるまで、侍の在り方については変わっていないように感じました。いずれの時代でも主君に従うことは絶対であり、侍を題材にした作品の多くは、戦いの中でどう死ぬかを重視しています。
本題に戻りますが、このゲームではそうした侍本来の誉れであり名誉なりに反する行為を行うようになっていきます。主人公の仁は、誉れよりも民の命を助けることをなにより重視し、ときには暗殺のような殺し方をしたり(暗殺は武士道に反するようです)、主君の意に反する道を進むようになっていくのです。
最初は、それの何がいけないのか、ピンときませんでした。主君の命令よりも、民の命、人の命の方が大事な気がします。主君としてもなにより民の命を守ることが重要な気がします。しかしそうではなく、この時代の人たちは、何より侍としての「かたち」を重視しており、人の命を助けをしても「なぜ正々堂々と戦わないのか」の罵られるようなこともあるのです。
主人公の仁もある意味現代的な視点をもった武士ともいえ、今の時代のプレイヤー近い視点です。感情移入もしやすく、それでいて今の人間にはよくわからない武士道と向かい合っていくことになるため、なんとういうかこのゲームはプレイヤーとして体感することで、サムライの生き様や歴史を深く知れる最高の教科書のようにも思えます。話はフィクションも交じり史実と変更されている点も多いようですが、侍について、そのスピリットについて、ここまで深入りできる作品というのはゲームに限らずなかなかないんじゃないかと思います。
単に「侍とはこういうものである」「武士道とはこういうものである」「だから侍としてこうしていく」という正道をいく一方通行の話ではないため、プレイヤーも体験し考える余地があります。
けれど、単純に「侍の武士道に背く」という逆手にとった設定だけではこの体験は味わえなかったと思います。主人公の仁が道を逸れていくのには、たくさんのドラマがあり、それを説得づける作り込まれた脚本があるからこそこの体験が実現できています。
メインシナリオとなる「仁之道」はもちろん、サブクエストのような扱いとなる「浮世草」まで奥深く説得力のある話が展開し、まるでそこに本当に人が住んでいるかのようにすら感じます。
「ゲームだから」という甘えのようなものが感じられないシナリオで、容赦ない話や希望のない話もありますが、だからこそ、もともとあまり関心のなかった私のような人間でも武士道の世界に入り込めました。
PS4最高傑作とも言われるの多い本作の中身は伊達ではなく、その魅力の核になっているのは、リアルなグラフィックだけでなく、ストーリーの部分も大きいです。そこまで感じるストーリー・シナリオでした。
これが海外ゲームだから驚きしかない
フィクションは混じっているものの、ここまでの話を作るには、徹底的な日本文化や歴史の下調べが必要になるかと思います。にもかかわらずこのゲームを開発ををしているのは日本のゲーム会社でなくアメリカのSucker Punch Productions社。脚本チームも海外の人たちのようです。
正直、海外ゲームの開発力というか注ぐ情熱は、驚きを超えて脅威にすら感じます。洋RPG『ウィッチャー3』をやった時にもなにかもう映画をみているようだなと感じましたが、このゴーストオブツシマはそれ以上です。
こういう作品がスタンダードになってしまうと、もう子供だましのシナリオというのはゲームでも通用しなくなってしまうんではないでしょうか。もう「ゲームだから」という表現がナンセンスになるのかもしれません。それほど脅威にすら感じるゲームです。
グラフィックや戦闘システムの評価レビュー
グラフィックは、予告トレーラーなどを見てもすぐわかるかと思いますが、まあすさまじい美しさです。天候や時間帯が変化していきますが、とくに夕焼けの時間帯の光景は見ていて感動するほどです。
また、山道、ススキ畑、竹やぶ、湿地帯、海辺、雪原など日本のあらゆる自然のシチュエーションが再現されているため、スティックをゆっくり倒しブラブラ歩いているだけでも旅行をしているかのような感覚を味わえます(※ただ後述しますが、使いまわしなどで気になる点もあり)。
それを対馬列島全体を再現したオープンワールドとして造り上げられているため、とにかく広く、散策しているだけでも飽きがきません。これはすぐにクリアしたくないなと思い、ただ歩いて散策や雑魚敵とのチャンバラだけを繰り返し、シナリオを進めなかった日もありました(笑)。それくらいずっとそこに居たくなる世界観です。
バトルシステムも爽快でよいバランスの仕上がりです。切り合いのモーションはリアルで、本当に侍同士で戦っているかのような緊張感を味わえます。それでいて「難易度」を変更することで、さまざまな遊び方ができるのが面白いところ。
難易度を下げれば、『真・三国無双』シリーズのようにバッタバッタ切る爽快チャンバラゲームにもなります。一方で難易度を上げれば、ジャスト回避やパリイ(受け流し)を徹底し、一撃が生死を分けるリアルな侍ごっこをすることもできます。暗具を多用した攻略法とすれば『メタルギア・ソリッド』の和風版かのようなステルスゲーにもなります。
なお、もともとさほど難易度は高くないゲームであるため、緊張感を味わいたい方は、最も高難易度の「万死モード」が最適かと思います。万死モードでも死にゲー(ソウルライクゲーム)ほどの理不尽な難しさはないため、ちょうどいい気がします。
基本的にシステムやルールがガチガチと固められておらず、自由にその世界を動き回れるため、好きなように遊びたい人に向いているゲームです。反対にステージクリア制のアクションゲームやスコアアタックが好きな方にはやや不向きかもしれません。
ゴーストオブツシマの不満点や悪かった点
ゴーストオブツシマといえどパーフェクトというわけではなく、いくつか不満点もありました。一つずつ列挙していきます。
1.構えや技が地味
このゲームでは4つの「石の型」「水の型」「風の型」「月の型」の型が型が用意されており、それぞれで構えや技のモーションが変るのですが、なんというかどれも全体的に地味です。とくに「月の型」の構えはなんだかちょっとふざけているようでかっこわるい姿に見えました(笑)。
リアルを追及しているので仕方ないのかと思いきや、一方で「憤怒の舞」のようなまるで『るろうに剣心』の抜刀術(居合術)のような、漫画かといわんばかりの超人技も用意されているので、それならもう少し遊びの型みたいのをつくり、かっこいい構えや派手な技をもっと用意しても良かった気がします。
2.武器が少ない、短い
ゴーストオブツシマで使える武器は「境井家の太刀」の1本のみです。鞘の柄や装飾を変更することはできますが、刀そのものの形状は変えられません。ずっと同じ刀を使うことになるので、見飽きてしまう部分があります。
しかも、この境井家の太刀がちょっと短いということ。なんだか「小太刀」や「脇差」のようにみえる短さなんですよね。もっと堂々とした長刀で戦いたかったです。
3.衣服のバリエーションも少ない
ゴーストオブツシマで用意されている衣服(鎧)は、計13個であり、あまり多くはありません。しかも半分以上が、甲冑のような戦場用の重装備であり、軽装が少ないんですよね。もう少し、普段着系の衣服が欲しかった。一応は何個か袴(はかま)風の装備もあるんですが、もう少しバリエーションが欲しかったです。
銅装備はフィクションも混じった装備も多いようなので(たとえば「冥人の鎧」はもう少しあとの時代のデザインらしいが敢えて取り入れたとのこと)、それならば、もう少し遊びのある衣装を入れても良かった気がします。
まとめ:時代劇や昔の日本の世界で「侍ごっこ」をしたい人には最高のゲーム
時代劇や侍を題材にしたゲームはあれど、なかなかここまで自由自在にその世界を歩き回れ、戦えるゲームというのは少ない気がします。また、散々書いたとおりストーリーの面も素晴らしく、内容としてもその世界に引き込まれていきます。
「自分が侍だったらどう生きたのだろう」「昔の日本はどういった風景だったのだろう」のような想像を実際に体感できるゲームであり、大画面でやればタイムスリップしたような感覚さえ味わえます。
また、舞台となる鎌倉時代というのは、映画やゲームでこれまでなかなか題材とされなかった時代であるため、この時代を知りたい方にもかなりよい教材のようになるのではないでしょうか。
商品紹介
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