1997年に公開されたジブリ映画『もののけ姫』。
当時の日本映画の歴代興行収入第1位を記録し、桁違いのヒットをとばしたジブリ映画。
当時はとにかくすごかった。老若男女とわず、どこもかしこも「もののけ姫、もののけ姫」。
ただ、私はジブリ映画は大好きなのだけど、この作品だけはどうも好きになれなかった。
世間の盛り上がりもちょっと異様感じていた。
で、30代になった今、20年ぶりにちゃんと観ました。
それで、この作品がヒットした理由が少しだけわかったような気がしました。
『もののけ姫』に対する感想というか考えを、少し書いていきます。
『もののけ姫』公開当時の盛り上がりと、違和感
『もののけ姫』は、1997年に公開されたジブリ映画。映画のキャッチコピーは「生きろ。」
興行収入193億円、観客動員数1420万を記録し、当時の日本映画の歴代興行収入第1位となった映画。
当時はほんとにすごかった。学校ではもののけ姫の話でもちきり。
テレビでは連日のようにもののけ姫の特番。
主題歌を出せば、かるくミリオンヒット。
「この作品はいままでのジブリと違う」
「すべてのシーンが作り込まれており、予定調和が崩された素晴らしいシナリオ」
「何年もの構想のもと制作陣がほんとに苦労した映画」
「日本映画の歴史を覆す名作」
「今の社会や若者たちへのメッセージが含まれている」
などなど、すごい持ち上げようだった。
当時私は小学生だったけど、この盛り上がりについていけなかった。つまらなかったわけではないけれど、そこまで面白いものなのかと。異様な世界観だった『風の谷のナウシカ』とか、冒険感満載の『天空の城ラピュタ』の方が、ずっとワクワクして、もののけ姫には目新しさのようなものを感じなかった。
子供ながらにみて、ちょっとそれまでのジブリ映画とは違う、重さや残酷さみたいのは感じたけど、だからといって突き刺さるような強烈なインパクトは感じなかった。「ジブリやアニメでこれやったから騒がれてるだけでしょ」、「なんでいい大人たちまで騒いでるのって」ってちょっと冷めた目でみてた。子供のくせに。あと例の主題歌がちょっと生理的に気に食わなかった(笑)
それで、もののけ姫にはその後もあまり興味はなかった。
その後も「金曜ロードショー」などて毎回放送もされていたので、鼻をほじりながら片目で見たこともあったけれど、ちゃんとは観ていなかった。
それで今回20年ぶりに、もう一度ちゃんと真剣に、もののけ姫を観てみた。
2.多くの世代に共感されたのは、脱ボーイミーツガールと、「自然&日本神話」の世界観なのではないか
大人になればまた意味もわかるのかなって思っていたけれど、30代になった今観ても、内容自体はそこまで突き刺さる感じはなかった。
「使命」とか「生き様と」か、そういう”深み”みたいのはあるっちゃあるけど、それでもやっぱりアニメというかファンタジーな世界の話。浮世離れしたどこか違う世界の話。
もっとメッセージ性のある映画ってのは他にも沢山あるし、ファンタジーではやっぱり限界がある。当時の特番で語られていたような社会や若者へのメッセージはやっぱりわからなかったし、これを観てなにか素晴らしいことを学べるようなものではなかった。「もののけ姫が他の映画とは特別なにが違うぞ!」って感じはやっぱりなかった。
でも、今回改めてみて、強く感じることがあった。
それは、この映画は世代の枠を、完全に超えた造りになっていること。
老若男女問わず、全世代にウケる娯楽映画の造りであること。
ポイントとなるのは、”浮世離れ”。
そう思った理由は二つあって、一つは「ボーイミーツガール」。
ジブリ映画は大抵、少年少女のボーイミーツガール的な話が盛り込まれる。これは若い時にみればキラキラしていて輝いてみえるけれど、ある程度の年齢になると抵抗も感じてくる。眩しすぎるというか。たとえば『耳すませば』とかイイ映画だけど、今観ると結構きついものもある。
けれど『もののけ姫』の場合すこし違う。もののけ姫もボーイミーツガールなわけだけど、死にゆく使命をおったアシタカと、狼に育てられたサンの話。もう完全に浮世離れしている設定なので、余計な雑念が入らない。大人やお年寄りでも、世代を越えて入り易い。ちょっと言い方は悪いが、寿命の近いお年寄りがみても、死と対面しているアシタカに少し共感できるんじゃないだろうか。
ジブリならではの造りの良さにくわえ、そんな全世代が入り易いボーイミーツガール映画だったから、幅広く共感され拡散されたんじゃないかと感じる。それに、いい年こいた大人たちが「耳をすませばが面白かった」と「もののけ姫が面白かった」では、人に勧める難易度も違うし。アニメがいまほどに市民権を得ていなかった当時は特に。
もう一つは、「日本神話」の神秘的な世界観。
もののけ姫は、人間の手がまだ十分に入っておらず、人と自然、そして神々までが共存した神話時代の話。こういった日本神話を題材にした映像作品は意外と少ない。
wikiでは日本神話を題材にした映画は、たった数本しかない。
wikipedia 日本神話を題材とした映画作品
この日本神話ってものに意外と需要があって、それにもののけ姫が応えたからではないだろか。
『もののけ姫』では、徹底的に作り込まれた世界観、美しい映像、そして「久石譲」による神秘的な音楽で、自然と神々が共存していた神話時代の日本をこれでもかというほど描いている。現代の人が目にすることは決してできない、神話時代の日本の神秘的な雰囲気を、アニメという媒体を活用して徹底的に創り出してる。浮世離れした別世界、ファンタジーを見せてくれる。
だんだん歳をかさね現実が見えてくると、大自然、歴史など、壮大で神秘的なものに逆に興味をったりしないだろうか。
私は10代の頃は自然など興味もなかったし、歴史の授業なども退屈でしかたがなかった。でもなんだろう、年齢を重ねる毎に、山とか川とか、大自然とか、はたまた「この国は太古の昔どうなっていたのだろう?」とか、そういうものに少しずつ興味が沸くようになってきた。老後に盆栽、山巡り、歴史建造物をツアーなどに目覚める人も多いけれど、結局はそういうことなんじゃないだろうか。行き着くところ、自然や歴史とか、そういう神秘に惹き込まれるというか。
ファンタジーとか虚無とか、そういうものを求めた大人たち。それが日本神話、しいてはもののけ姫という作品に向いたのではないだろうか。
この2つの理由から、もののけ姫のもつ浮世離れした感じが、多くの世代にウケたんじゃないかと。当時広い世代が取り込まれ、大ヒットになったんじゃないかと。
もちろんそういうの関係なしに一級の映画だとは思うけれど、プラスαの後押しになったのは、そういうことなんじゃないかなと。
改めてみてそう感じました。
まとめ
以上、もののけ姫に対する感想というか考え、想いでした。
私の主観交じりの突っ走った考えですので、世間は実際どう感じていたかは不明です。あくまで私は20年ぶりにこれを観て、そう感じました。
いずれにせよ、ジブリ映画としては少々特殊なタイプ。
最近観てない方は、もう一度よく観直してみると、また違った印象を感じるかもしれません。
『もののけ姫』を今観るには?
もののけ姫は、現在動画配信系サイトでは公開されていないようです。(2018年8月時点)。
視聴するには、TUTAYAなどでレンタルするか、DVDを購入するかのいずれか。
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