※映画『君の名は。』のネタバレを若干含みます。
大ヒットを飛ばしている映画『君の名は。』。
動員数300万人を突破に王手をかけ、累計興行収入は既に38億円を超えています。しかもyahoo映画の評価レビュー得点は平均4.55点の高評価。(9/8時点 公開10日間間)今年は私が溺愛している『シン・ゴジラ』がブッチ切りかと思いましたが、いきなりもこんな強敵が。
さて、この『君の名は。』を大絶賛している人がいる反面、「なぜこんなにヒットしているのか理由がわからない」、「所詮アニメでしょ?」、「なにこれジブリじゃないの?なんなの?」っといった方も多いかと思います。
そこで、この『君の名は。』がなぜ人気・高評価でヒットしているのかを多角的に考察しています。
※新規層~マニア層までなぜ幅広くヒットをしていかの商業的観点からの考察となります。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その①:明るくわかり易い恋愛映画
『君の名は。』は、予告編を観ても分かる通り、恋愛が主体の映画です。そして、この恋愛パートがとにかく分かり易く、明るく、清清しい。
新海監督はこれまでも恋愛をテーマにした作品をいくつか制作していますが、これまでの作品は全国公開映画としてはどこか癖や影の様なものがあり万人向けではありませんでした。
一方で今回の『君の名は。』は、途中切ないシーンや複雑な設定も混じってくるものの、作品トータルとしてはとにかく分かり易く明るい。大抵の人はこの話を観て「ああ良かったな、いいな」と感じられる癖の無い描写になっています。ジブリでいえば『耳をすませば』的な感じでしょうか。
もともとストーリーの構成や作画レベルは素晴らしい新海シリーズ。これに、皆が入っていける明るさや分かり易さが加わったため、ついに噴火したのではないかと。
今回の『君の名は。』のメイン層は中高生~大学生と言われています。比較的若い世代にも伝わり易く感され易い恋愛を描き、新海シリーズを知らない新規層までをどんどんと取り込めた事も(むしろそこを爆心地と出来たのが)、人気で高評価を獲得した理由の一つとして考えます。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その②:予告編詐欺のストーリー
『君の名は。』は、予告編のを観た段階で「ああ、これはただの恋愛映画ではないな」と勘付いていた方も多いかと思います。でもそんな方であっても実際に映画を観たら、想像以上に斜め上の展開で驚いたのではないでしょうか。
この映画は、それくらい途中から世界観を急激に捻じ曲げてくる系の作品です。その展開の流れが絶妙でした。オカルト要素やSF要素など次々に新しい要素が入ってきて、「え、ちょっと待って聞いてないんだけど」、「なにこれすごい」的な感想を持った方が多いのではないでしょうか。新海監督の作品を始めて観た方は特に。
そんな予告編詐欺とも言えるほどの予想外な展開が、人に話したくなる衝動を与え、口コミの輪を広げヒットを後押ししたのではないかと思います。
この予告編詐欺のやり方は、同じくヒットしている『シン・ゴジラ』にも繋がる所がありますね。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その③:新海シリーズ全部入りでファンの心もキャッチ
新海シリーズの”全部入り作品”だった事も、この作品が人気・高評価な理由の一つかと思います。
今回の『君の名は。』は、これまでの新海シリーズ作品 『ほしのこえ』、『雲のむこう、約束の場所』、『秒速5センチメートル』、『星を追う子ども』、『言の葉の庭』計5作品の集大成的な作品となっています。
これまでの5作品で描かれていたテーマやシーンの描写をこっそりと?取り込んでおり、古くからのファンはニヤリとしたでしょうし、色々と繋がりの考察を楽しめたかと思います。
新規層だけでなく、旧来からのファンの心も離さずキャッチした事も、今回の大ヒットを支えた理由のひとつでしょう。
↑『秒速5センチメートル』で登場していたとの同じチェーンのコンビニが登場。この様な小ネタも満載の本作。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その④:東宝のごり押しプロモーション
今回の『君の名は。』は、新海シリーズとしては異例となる全国300スクリーン以上の劇場で公開されました。またそれに伴い、東宝側が、TV・ネット・ラジオなど各種メディアを惜しみ無く使い、ごり押しと言えるほどの事前プロモーションを行っていました。
もともとキャラデザインも良く作画も美しい新海作品なだけに、ここまで大々的にプロモーションをすれば嫌でも大衆の注目を集めるのは当然の結果であったのかと。
それでいて尚且つ映画の中身自体も素晴らしく、誰かに話したくなるレベルの仕上がりであった為、上手い具合に起爆し人気が拡散されたのではないかと考察します。
↑サントリーやJR東日本など、プロモーション用のコラボやタイアップは数知れず。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その⑤:今の時代にマッチしたテーマ
今回の『君の名は。』で特徴的だったのは、災害による死をサブテーマとして取り込んでいること。
昨今の日本は、「東日本大震災」や「熊本地震」と度重なる災害に襲われ、ゆくゆくは南海トラフ大地震も警戒されています。
この様に災害が身近になった時代だからこそ、今回のサイドで描かれていたこのテーマは、観客に響き考えさせられるものがあったのではないでしょうか。これも人気や高評価の一旦を担っていると考えます。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その⑥:何度も見直せるストーリー
『君の名は。』は時間軸が複雑に交差しているため、なかなか一度見ただけでは細かな感情の変化までは追いにくい作品となっています。2度、3度観る事でやっと主人公たちのその時々の心情の変化がわかり、また違った目線での楽しみを味わう事ができます。
加えて、「過去に何度も落下している隕石」、「宮水神社の巫女の呪縛」、「三葉と父親の関係」など、細かな考察要素も多く、その手の複線や裏設定などを探る目的でも何度も楽しめる映画です。
こういったさりげなく散りばめられたリピート要素により多くのリピーターを生んだことも、ヒット理由の一つと言えそうです。
『君の名は。』が人気・高評価な理由その⑦:魅力的な主役キャラクター
この手のボーイミーツガール的な映画は、主役のキャラクターが好きになれるかが作品の評価にダイレクトに影響するかと思います。
そして、本作の主役を務める立花瀧、宮水三葉。この2人のキャラはどちらも自然体で嫌味の無い爽やかなキャラであり、まるでジブリアニメを連想させるような透明感に溢れています。
加えて、早い段階から2人を入れ替え、コメディ全開で馬鹿さ加減もアピールしているので掴みもばっちり。男性が気取った男性キャラを嫌ったり、女性がかわい子ぶった女性キャラを嫌うような同属嫌悪的な感情もかき消され、誰もがこの2人のキャラクターを素直に受け入れられたのではないでしょうか。この主役キャラクター2人の魅力も、人気や高評価に加担しているかと思います。
特に宮水三葉については、これまでの新海シリーズのヒロインと比べると親しみやすい感じを受けました。性格もサバサバしており優等生ではなく、デザイン的にも完璧な美少女ではなくやや芋っぽい感じがありました。こういうキャラクターにしたからこそ、女性の観客からもすんなり受け入れられたのではないでしょうか。それを示すように本作ではこれまでとは打って変わり、女性客からの人気が特に高くなっている様です。
『君の名は。』は、本当に誰が観ても楽しめる?
最後に、『君の名は。』は誰が観ても楽しめるかについて。
『君の名は。』は、新海監督の中では万人向けの話ですし、恋愛以外にも様々な要素が詰まった作品ですので、基本的には年代や性別関係無しに楽しめる一級の娯楽映画かと思います。作画や演出もアニメアニメしていないので、アニメが苦手な方でも入り易い作品かと思います。例えば『サマーウォーズ』などが抵抗無く観れた方であれば、ストーリー的にもヴィジュアル的にも十分楽しめるかと。
ただしシビアにみれば、客層を観ても分かる通りどちらかと言うとやはり若者向けの作品です。10代後半~20代前半くらいが一番感化されるような作品かと。それ以上の年代の方が観ると、「面白いとは思うけど、こんなに評価されるほど?」と疑問が沸くのは否めない様にも感じます。
特に、名作と言われている『秒速5センチメートル』に感銘を受けた層には、少々モノ足りない部分もあるかもしれません。(ジャンルが似ていてそうで若干違うので、比較が難しいですが)
とはいえ、それはあくまで突き詰めた話。
普通に観る分には、基本的には誰でもが楽しめ感銘を受けられる素敵な映画だと思います。正直、アニメ映画としては、ここ数年でブッチギリの良さなのではないでしょうか。
なお、「恋愛要素のある映画なんて反吐が出るで絶対に無理」、「アニメの映画なんて生理的に受け付けないので絶対に無理」という方には、この映画はおすすめしません。
小説版&漫画版『君の名は。』
今回の『君の名は。』も、恒例の通り小説版や漫画版が発売されています。
小説版、漫画版では映画本編の細かな部分の補填や、映画本編では描ききれなかったサイドストーリーが描かれていますので、『君の名は。』という作品をもっと理解したい方にはおすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
まとめると、『君の名は。』は正直欠点の無い優等生的な映画です。ここはダメだという所が殆どありません。だからプロモーションの効果も効き、大ヒットしているのでしょう。
とくに観たい映画がなく何を観ればいいか分からない方には、おそらく今上映されている映画で、最高の選択肢かと。あともちろん『シン・ゴジラ』も。
関連記事:
『君の名は。』で再評価?傑作鬱アニメ映画『秒速5センチメートル』紹介
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押井守がやってきたような手法なんだろうけど、
新海おにいさんや庵野おじさんみたいな比較的バランス取りが上手い人だと
大ヒットにつながるんだろうね。面白いのが絶対条件だけど。
子供向け以外の映画で客足伸ばすならこうすべき、っていうのが
アナ雪あたりから見えてきたように思います。
もう昔のようなやりかたでは、たとえ傑作でも数字が作れないのでしょう。
なんにしても東宝は2本連続で当てたし、来年の夏も頑張ってもらいたい。
夏アニメないと寂しいものね。
細田、庵野、新海、ジブリで4年に1本ローテーションてわけにはいかないですかね(笑)
コメントありがとうございます。
バランス取りですか。まさにその通りかもしれませんね。
それでいて『シン・ゴジラ』も『君の名は。』も、内容的に面白いからすごですよね。
この2作品を今後、ヒットのお手本として使われていくのではないでしょうか。少なくとも東宝では。
夏アニメ、来年も面白いの期待したいですね。まさか例のゴジラのアニメが来年夏にきたりして(笑)
なんか流行りに流されて売れた感がすごい
正直今時の子なんて内容関係なく
周りが面白いって言ったらそう言うでしょ
人気だとは思ってましたがまさか興行収入邦画歴代2位確実視レベルまで行くとは予想以上でした
9割9分syumiさんの考察に同感ですが、リピーター層の想定以上のリピート力(笑)がこの実績に繋がったのかなとも思います
コメントありがとうございます。
邦画歴代2位はヤバイですよね。面白い映画ではありましたがまさかここまで行くとは。。
知人の話だと中高年にも人気なようです。もう何が流行るかわからない時代になってきましたねえ。