今、「おすすめ漫画ランキング」などが沢山作られていますが、なぜこれが挙がってこないんだろうと思う作品が一つあります。
それが漫画版『風の谷のナウシカ』。
『風の谷のナウシカ』は劇場映画版が有名ですが、その原作として漫画版があります。これがくせ者。「これは漫画なのか?」と思わせるほどの異様な作品となっており、劇場版のイメージやジブリのイメージを遙かかなたへふっ飛ばす作品。
本記事では、この漫画版『風の谷のナウシカ』の特徴や魅力を解説していきます。
※ストーリーの直接的なネタバレはなしで紹介します。
1.不気味で恐ろしさもある、漫画版『風の谷のナウシカ』とは?
『風の谷のナウシカ』は、1984年に劇場公開されたアニメーション映画が有名です。漫画版『風の谷のナウシカ』とは、その原作に当たる作品です。
漫画版『風の谷のナウシカ』の、具体的な特徴としては次の通り。
漫画版風の谷のナウシカとは?
・作者は「宮崎駿」。宮崎駿にとって唯一の長編漫画となり、代表作となる。
・月刊『アニメージュ』で1982年から連載開始。その後10年間連載され1994年に完結、全59話。
・のちにコミック版として、全7巻で発売。
・1984年に公開された劇場映画版は、漫画版の前半一部を抜粋し一部アレンジしたものにすぎない。
・ジャンルは、SF/ファンタジーとなる。ただし、科学・宗教・思想・ナショナリズム・ヒューマニズムなどあらゆる要素が詰め込まれており、ひと括りに分類できない作品。
・どの漫画にも似ない、独特のタッチで描かれる。殺傷シーンなどのグロテスクな表現もややある。
・1994年に第23回『日本漫画家協会賞』の大賞を受賞。1995年、第26回『星雲賞コミック部門』を受賞。海外でも8か国語で出版され、累計発行部数は1,200万部を超える。
↓主人公は映画と同じく少女ナウシカだが、その雰囲気は大きく異なる。
タッチも独特で、不気味でグロテスクなシーンも多い。
出典:https://ameblo.jp/yoshiki-0722/entry-12024016024.html
あらすじ
ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業は瞬く間に発展。
人類は、月へ移動する技術、生命を操る術すら身に付けた。
産業文明が絶頂を極めた時に、「火の7日間」が起こる。
突如現れた「巨神兵」により、7日間で世界は滅亡した。
1000年後。
かつての産業文明は有毒物質をまき散らし、大地は汚染され「腐海」となる。
わずかに残った人々は、腐海や蟲たちの脅威におびえながら、たそがれの時代を生きていた。
辺境の「風の谷」に住む少女ナウシカ。
東のトルメキア、南の土鬼(ドルク)、2つの国が生き残りをかけ争う。
ナウシカはその戦争に巻き込まれつつ、世界の真実に触れる事となる。
出典:http://flying-fantasy-garden.blogspot.jp/2014/09/blog-post_61.html
2.映画版と漫画版の違い
1984年に公開された映画版『風の谷のナウシカ』と、この漫画版ではいくつか違いがあります。
①映画版は、漫画版の序章にあたるようなもの
映画版は、いうなれば漫画版の1~2巻程度の話をまとめ、一部アレンジしたものです。
映画版は一応はハッピーエンドになったかのようにまとめられていますが、
この世界は実は想像を絶する状況に追い込まれており、漫画版ではその先が描かれます。
映画版では触れられなかった旧世界の真実・巨神兵の在り方・そして人の在り方にも迫っていきます。
②土鬼(ドルク)という国家が存在する
映画版では登場しなかった土鬼(ドルク)と呼ばれる巨大国家が、漫画版には登場します。
土鬼(ドルク)が行っていることがなかなかのキーポイントとなっており、物語は予想外の方向に進んでいきます。
③怖く重くハードな世界観
『風の谷のナウシカ』は映画版もなかなかに暗く恐ろしく、ジブリとして異色な作品でした。が、この漫画版はさらに上を行っています。
描写としての怖さもありますが、この作品で描かれている思想、そして”人”の描き方について、それ以上の恐ろしさを感じます。
救いはなく、重くハードな世界観の作品。
ただ、だからこそ光る魅力のようなものもあります。
④ナウシカのキャラクターも少し違う
映画版のナウシカはまるで聖女のように扱われていましたが、漫画版では描き方が違っています。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、人は平気で殺しますし、その違いに驚かされるはずです。そして最後は・・。
3.宮崎駿やジブリのイメージを覆す、漫画版『風の谷のナウシカ』の魅力
おそらく多くの方は、宮崎駿さんに対して、暖かく優しいイメージを持っているかと思います。
が、この作品を読むとよくも悪くも裏切られるかと。この漫画はそんな作品。
商用目的というより、とにかく描きたい意志が全編に感じられる作品であり、宮崎駿さんの本性が剥き出しになったような作品に感じます。
SFとしてみても、唯一無二の傑作かと思います。
『エヴァンゲリオン』あたりからこの手の奇抜な作品は増えてきたかと思いますが、それ以前の80年代~90年代初頭の時代に、このような内容の話が描かれていたことに驚かされるかと思います。しかもそれがあの宮崎駿であるという。
この漫画は、環境問題への警告やヒューマニズムの在り方など、本当にあらゆるものが詰めこまれており、それが今まで見たこともないような切り口で描かれています。
「ここが魅力だ」、「ここが面白い」と具体的に述べられないような名作。
漫画の域を越えた、異様な世界に引き込まれていきます。
決して万人向けではありませんし、読んでハッピーになれるものでもありません。
おそらく逆に疲れるかと。
今まで持っていたナウシカやジブリ、宮崎駿さんに対するイメージもぶっ壊れるかと。
ですがその上で、一度は読んで貰いたいおすすめの作品です。
きっと濃いひと時が過ごせ、忘れられない一冊になるはずです。
まとめ
以上、風の谷のナウシカの漫画版についてでした。
本当はもっと色々書きたかったのですが、この手の名作は下手に語るのもヤボなものですので、ここまでにしておきます。
漫画好きの方はぜひ一度読んで、自分の目でこの世界を体験してみて下さい。
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